愛犬の健康を守るために、正しい散歩をしたいと考える飼い主様は多いかと思います。誤った散歩の仕方では、健康に悪影響を及ぼしストレスを溜める原因になることも。
そこでこの記事では、適切な犬の散歩の時間や回数だけでなく、散歩が必要な理由や、充実した散歩にする方法も解説します。愛犬に健康的に長生きしてほしいと思っている飼い主様は、ぜひ参考にしてみてください。
犬の散歩の適切な時間や回数は犬種によって異なる
犬の散歩の適切な時間や回数は、犬種ごとに異なります。
「小型犬」「中型犬」「大型犬」「ミックス犬」の4つに分けて、以下の表にまとめました。
犬種別や体重別 | 1回の散歩時間の目安 | 1日の散歩回数 | |
小型犬 | 【主に愛玩犬として改良された犬種】
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20~30分 | 1~2回 |
【番犬として改良された犬種】
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30~40分 | 1~2回 | |
【牧羊犬、使役犬、猟犬として改良された犬種】
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40~60分 | 1~2回 | |
中型犬 |
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30分 | 2回 |
【狩猟犬や牧羊犬として改良された犬種】
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60分 | 2回 | |
大型犬 |
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30~60分 | 2回 |
【狩猟犬や牧羊犬として改良された犬種】
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60~120分 | 2回 | |
ミックス犬 | 10kg以下の小型犬 | 20~40分 | 1~2回 |
10~20kgの中型犬 | 40~60分 | 2回 | |
20kg以上の大型犬 | 60分以上 | 2回 |
ただし、愛犬の年齢や体調、持病、性格によっては当てはまらないこともあります。愛犬の気持ちや体調に寄り添いながら散歩することを心がけましょう。
小型犬の散歩
小型犬は以下の3つで散歩時間が分けられます。小型犬の散歩回数は1〜2回が目安です。
- 愛玩犬として改良された犬種
- 番犬として改良された犬種
- 牧羊犬、猟犬として改良された犬種
愛玩犬とは「人間が可愛がるのを目的として改良された犬」のことです。代表的な犬種はチワワやシーズーがあげられます。愛玩犬は、小さくて飼いやすいという印象がありますが散歩は必要です。1回の散歩時間は20~30分を目安にしましょう。
番犬として改良された日本スピッツやフレンチブルドックの散歩時間は1回につき30~40分です。
1日中走り回って羊や獲物を追いかける必要があった牧羊犬や狩猟犬は、他の小型犬よりも散歩量を増やす必要があります。1回40〜60分が目安ですが、散歩とドッグランを併用するのもおすすめです。
ただし、成犬でも4kg以下の場合は、骨や関節が弱い傾向にあるため注意が必要です。負荷がかかりすぎないように坂道や階段を避け、長距離は歩かせないように気を付けましょう。
中型犬の散歩
中型犬の散歩は「狩猟犬や牧羊犬として改良された犬種」とそれ以外の犬種に分けられます。
柴犬やシェットランド・シープドッグ、アメリカン・コッカースパニエルなどは1回30分を目安にすると良いでしょう。「狩猟犬や牧羊犬として改良された犬種」であるビーグルやボーダー・コリーなどは60分程度が望ましいです。
中型犬の散歩は1日2回が目安となります。
大型犬の散歩
大型犬の散歩時間も、中型犬と同じく「狩猟犬や牧羊犬として改良された犬種」とそれ以外に分けて考えられます。
ゴールデンレトリバーや秋田犬などの大型犬の目安は、1回につき30〜60分です。
ジャーマン・シェパード・ドッグやドーベルマンなどの「狩猟犬や牧羊犬として改良された犬種」については、散歩量を増やしましょう。1回の目安は60〜120分となり、散歩だけでは難しい場合も。十分な散歩時間をとれなければ、ドッグランを利用するのもおすすめです。
ミックス犬の散歩
ミックス犬の散歩時間を考えるときは、体重を目安に考えると良いでしょう。
10kg以下の小型犬は20~40分、10〜20kgの中型犬は40〜60分、20kg以上の大型犬は60分以上が望ましいです。
1日の散歩回数は、小型犬は1〜2回、中型犬と大型犬は2回が目安となります。
子犬の散歩デビューは免疫力がつく生後4カ月以降が望ましい
子犬の散歩デビューは、ワクチンプログラムが終了した生後4カ月以降が安心です。ワクチン接種を終えていないと、感染症のリスクが高まるためです。
子犬のワクチンには、接種義務である「狂犬病ワクチン」と任意の「混合ワクチン」がありますが、ここでいうワクチンプログラムとは任意の「混合ワクチン」のことを指します。
世界小動物獣医師会(WSAVA)では子犬の混合ワクチンの接種期間を以下のように推奨しています。
VGG は、6〜 8 週齢で初回のコアワクチン 接種を行い、その後、16週齢またはそれ以降まで 2〜 4 週間隔で接種を行うことを推奨する。 |
そのため日本の多くの動物病院では、生後6〜8週齢で最初のワクチン接種をし、16週齢ごろに最後の接種を終えるように調整することが多いです。
しかし、生後4カ月前後になると子犬は好奇心よりも恐怖心や警戒心が強まる傾向に。散歩を怖がってしまうこともあるでしょう。初めての散歩の時期は、かかりつけの獣医師と相談しながら決めると安心です。
犬の散歩に必要なもの
犬の散歩に必要なものは以下の2つに分けられます。
- 犬が身に付けるもの
- 飼い主が持参するもの
それぞれ具体的に解説していくので、参考にしてみてください。
犬が身に付けるもの
犬が身に付けるものには以下のようなものがあげられます。
- 首輪もしくはハーネス
- リード
愛犬の安全のためにも、首輪やハーネスは散歩中に抜けたり外れたりしないものを選びましょう。念のため、迷子札をつけておくのもおすすめです。
首輪はお散歩トレーニング中の犬に適しています。犬は急所である首を直接刺激され、リードを持つ飼い主の意思に合わせて行動するからです。
犬の胴体に装着するハーネスは、フレンチブルドッグなどの頭の大きさと首の太さが近い犬や、気管支が弱い犬におすすめです。
リードは犬の命を守るためにも、散歩のときは必ず使用してください。散歩のときは、スタンダードリードと呼ばれる一般的なリードを選ぶと良いでしょう。
飼い主が持参するもの
飼い主は、犬が排泄物をしたときに処理できるグッズを持ち歩きましょう。具体的には、以下の4点です。
- 水入りペットボトル
- エチケット袋
- ティッシュペーパーやウェットティッシュ
- ビニール袋
ウェストポーチなどに入れて持参すると良いでしょう。
犬の散歩のマナー
犬の散歩を行うときには、しっかりとマナーを守りトラブルが発生しないように注意が必要です。
以下の3つのマナーに気を付けましょう。
- 排泄物は放置しない
- リードは短めに持つ
- 人とすれ違うときは配慮する
それぞれ具体的に解説していきます。
排泄物は放置しない
散歩中の排泄物は放置してはいけません。犬の尿や便の放置は、ゴミを道端に捨てるのと同じです。周囲とのトラブルにならないためにも、以下のような対策をしましょう。
- 排尿は持参した水で洗い流す
- 便はティッシュペーパーなどで拾い、持参したエチケット袋に入れて持ち帰る
できれば、散歩前に排泄を済ませるようにしつけましょう。とはいえ、しつけができていなかったり、体調がすぐれなかったりすることもあるかと思います。その場合、排泄物は放置せずに飼い主が責任を持って処理をすることが大切です。
リードは短めに持つ
リードは短めに持って散歩をしましょう。長く持ちすぎると、思わぬ事故やトラブルが起こる可能性があるためです。
リードが長ければ、自動車とすれ違うときに犬をコントロールできなくなり、犬が飛び出してしまうことも。長いリードに気付かないまま、走ってきた自転車が引っ掛かってしまう可能性もあります。咄嗟の出来事に対処できなくなり、大きな事故を引き起こしてしまうかもしれません。
リードを短く持ち犬の安全を守ると同時に、周囲への配慮も行いましょう。
人とすれ違うときは配慮する
人とすれ違うときは、飼い主が間に入るなどの配慮が必要です。犬は突然、人に飛びついたり吠えたりすることがあります。
急に犬が飛びついたり吠えたりすることで、相手に怪我をさせてしまうこともあるかもしれません。犬が苦手な人であれば、相当な恐怖心を与えてしまいます。
すれ違う時に相手が怖がっていないかにも注意を払いながら散歩をすることが、飼い主のマナーといえるでしょう。
犬の散歩が必要な4つの理由
基本的にはどんな犬にでも散歩は必要です。本章では犬の散歩が必要といわれる4つの理由を紹介します。
- 病気予防や健康維持
- ストレスの軽減
- 犬の社会科
- 愛犬とのコミュニケーション
それぞれ具体的に解説していきます。
病気予防や健康維持
犬の散歩には病気の予防と健康維持の効果が期待できます。十分な散歩ができていないと運動不足になり、肥満や病気の原因になるでしょう。
運動不足によって発症する病気には以下のようなものがあげられます。
- 糖尿病
- 心臓病
- 関節炎などの骨関節疾患
- 呼吸器疾患
愛犬の健康維持のためにも、毎日の適度な散歩はかかさず行いましょう。
ストレスの軽減
散歩をすることで、気分転換にもなりストレスを軽減できます。1日中家の中にいると犬にとっては刺激不足でストレスが溜まる一方です。
ストレスが溜まると、元気がなくなり食欲不振になることもあるでしょう。唸る、吠える、噛みつくなどの問題行動を起こす可能性も。重度のストレスになると、皮膚炎や脱毛、下痢、嘔吐などの体調不良を引き起こすケースも考えられます。
毎日の適度な散歩で犬のストレスを解消しましょう。
犬の社会化
犬は散歩をすることで、社会性を見つけられます。犬は初めて見る人や音、匂いに強い警戒心を抱きます。
そのため、他の犬に激しく威嚇したり怖がったりすることも。初めて見る人に吠えたり噛みつくこともあるかもしれません。
散歩をし、飼い主以外の人や犬に出会い、電車や車の音に刺激を受けさせてあげることが大切です。これらの刺激に慣れることで、社会性が身に付き犬は落ち着いて過ごすことができるでしょう。
愛犬とのコミュニケーション
愛犬とのコミュニケーションの場としても散歩は必要です。散歩を通してコミュニケーションをとることで、信頼関係が生まれ犬の問題行動も防げるためです。
例えば、無言で散歩をしていると犬も自分の世界に入ってしまいます。行きたい方向に歩き、拾い食いをするなど問題行動を起こすことも。「いい天気だね」「えらい子ね」など愛犬に声掛けをしながら散歩をしましょう。
散歩を通してコミュニケーションをとることを意識してみてください。
犬の散歩を充実させる方法
愛犬の健康を考える飼い主は、より散歩を充実したものにしたいと考えるでしょう。
本章では犬の散歩をより良くするための方法を紹介します。
- ルートを変える
- 食後の散歩は控える
- 快適で安全な時間帯を選ぶ
ルートを変える
たまに散歩ルートを変えるのもおすすめです。毎日同じルートだと犬が飽きてしまい刺激不足になるかもしれません。また慣れた道だと、犬が飼い主を引っ張り主導権を握ろうとすることも。
例えばいつもの散歩ルートを逆回りで行うだけでも、新しい刺激が増え気分転換にもつながります。犬の好奇心を満たすことができ、より充実した散歩になるでしょう。
ただし、新しい環境が苦手な子もいるため愛犬の性格によって工夫してみてください。
食後の散歩は控える
食後の散歩は控えるようにしましょう。胃捻転や胃拡張症候群を発症するリスクが高まるためです。胃捻転は胃がねじれてしまうことです。食べたものが胃で滞り、胃が広がることを「胃拡張」といいます。
その他にも食後の散歩は犬の注意力が散漫になりやすく、事故やトラブルを起こすリスクも高まります。
愛犬の健康と安全を守るためにも、食後2時間は散歩は控えましょう。
快適で安全な時間帯を選ぶ
安全で快適な時間を選ぶことで、充実した散歩が実現できます。犬は体温調整が苦手な動物です。
特に夏はアスファルトの照り返しを直接感じるため、注意が必要です。30度を超える日はアスファルトが50〜60℃近くなることも。熱中症の危険を伴うため、散歩は控えてください。
夏は比較的気温の低い早朝か日が沈んだ夕方以降に、冬は日中の日差しのある時間帯を選び、愛犬の安全を守りましょう。
まとめ|犬の健康維持のために適切な方法で散歩をしよう
犬にとって散歩は、心と身体の健康維持には不可欠です。しかし間違った方法で行うと、ストレスを与え体調不良を引き起こすこともあります。
愛犬に健康的に長生きしてもらうためにも、適切な方法で散歩を行いましょう。